発酵食品で脱・非常食のすすめ
見えない不安
災害時の非常食は準備していますか?
私の職業は看護師で、阪神淡路大震災を経験した神戸で災害看護を学び、救命救急センターで勤務していた経験もあり、災害に関しては日常から意識をして生活しているつもりでした。
東京に引っ越してきた時は海抜が高く地盤がしっかりした所で住居を探し、自宅内の家具の配置や就寝環境の整理、非常用バックの準備、災害時の避難場所の確認など、できる限りのことはしています。
しかし、昨年秋の超大型台風でスーパーやコンビニからパンや缶詰、インスタント麺が消え、世の中のパニックが伝わり得体のしれない不安に襲われました。
近くに頼りになる親族はおらず、土地勘も浅く、幼いこどもを連れている状況で、何か起こったら家族を守りきれるのか・・・と頭を悩ましました。
スーパーで感じたもやもや
TVなどのメディアでは非常食の蓄えとして缶詰やインスタント麺、レトルト食品が紹介されており、実際に店頭では買い占めによりあらゆる商品が消えたことに違和感を覚えました。
私は、こどもが産まれてからできる限り添加物を避ける生活をしており、離乳食は手作りで缶詰やインスタント麺、レトルト食品も食べさせていません。
なので、災害時に自分たちの食料を備蓄しておく必要はあるけれど、その非常食が添加物のたくさん入った加工品であることが嫌でした。
しかし、それに変わるものが何かがその時は分からずに、もやもやしていました。
私は昨年9月に自宅で麹を作る麹クリエイターの資格を取得し、それをきっかけに麹や発酵で繋がっている方達がいます。
迫り来る大型台風に世間がパニックに陥っている中、発酵を日常に取り入れている人達は、動揺することなく、冷静に戸締りや片付けなどをした上で、自宅の中にいるからこそ手の込んだ発酵食品を作ったり、発酵調味料で保存食品を作ったりとゆっくりと発酵に向き合い、災害に備えておられました。
冷蔵庫などがない時代から、食べ物を保存する目的で発酵は活用されてきた訳だから、発酵食品をうまく活用すれば災害を乗り越えられるのではないか、
災害用備蓄=インスタント麺
ではなく、
災害用備蓄=発酵食品
にしたいなと思いました。
賢者の非常食
そんな時に、発酵学の第一人者である小泉武夫さんの「賢者の非常食」という本に出会いました。
非常時に役立つ食べものは、日常生活でも元気の源となる食べものです。日頃から正しい食生活を送ることによってのみ、いつでも持ち出せる食べものを常備し、万一に備えることが可能となります。そうした意味で、この本を家庭に一冊置き、食の大切さに気づいたときに読み返してみると良いでしょう。昔の日本の家庭に必ずあった「赤本」のように、日頃から何度も読み返して、手垢がつくほどお使いいただければ、本書の役割は十分に果たせるものと思います。
上記は、はじめにの一部抜粋ですが、私が超大型台風の際に感じた違和感の解決方法がまさにこれだと思いました。
この本では、日本の歴史から始まり、東日本大震災、現代の食文化の変化などが書かれており、最後に賢者が選ぶ非常食ベスト20が紹介されています。
もちろん発酵食品も多数ランクインしています。
麹づくりを学ぶ中で、商品のパッケージに書かれている賞味期限や消費期限に頼るのではなく、腐敗と発酵の違い、長期保存の方法などを知りました。
そして、この本を読み、日本の発酵の歴史や発酵調味料のすごさを知り、この本を頼りに日常の中に非常食を少しずつ取り入れてきました。
その結果、今回の感染症の騒動によって起こった買い占めなどのパニックには巻き込まれずに、無駄に不安になることなく、通常通りの生活を過ごすことができています。
非常食というと、美味しくなかったり、質素なイメージがありますが、全くそんなことはありません。
発酵の力で旨味も栄養もUPし、身体にもよく、しかも特別な調理法や手間暇をかける必要はありません。
なので、忙しいワーママや幼いこどもを育てている家庭にこそ、取り入れるべきものだと思います。
私がすすめる非常食
災害看護の視点で考えると、災害時は非常事態で普段と同じ生活が送れる訳ではないので、外見上に怪我などがなかったとしても、大きなストレスがかかり精神的にも肉体的にも疲労してしまいます。
人間の三大欲求である衣食住が満たされない状況で、普段から食べ慣れた物を食べれることは重要です。
普段から食べ慣れていないものを、ストレスがかかっている非常事態に美味しいと感じることは難しく、経験的に美味しいと知っている食べ慣れた物を食べることで、美味しいと感じたり、リラックスできると言われています。
発酵調味料を使ったレシピは、日常だけではなく、非常事態でも家族の心身の健康を守ることができます。
そして、私が1番におすすめする非常食はやはりお味噌汁です。
出汁などはとらなくても、お湯に乾物をいれるだけで充分です。
ワカメ、アオサ、椎茸、干し海老、お麩、切り干し大根、大豆…
何のお味噌汁があれば、嬉しいですか?
一度、乾物コーナーで、非常事態に飲むお味噌汁を想像してみてください。
きっと、あれもこれもと欲しくなると思います。
非常食を日常から食すことで、生きる力が強い人になれるのだと思います。
様々な情報に振り回されるのではなく、平常心を保ち日々の生活を送れることを願います。